遂にアレンは全国を統一するに至った。

多くの者が傷つき、血を流した戦乱の時代は

ここに幕をおろし、新たな時代が生まれることとなる。

翌年、アレンは連邦政府を設立。

大陸全土とその近隣諸島は、連邦政府に統治されていくのであった……。


アレン;  大陸に残る傷跡は深く、人の心に刻まれし悲しみも、また深い。

我々は背負って生きてゆかねばならぬ。過去の過ちを。

そして、我々は超えていかねばならぬ。この深い悲しみを。

そして未来へと……。



レイン; もういいでしょう……。

シンバとソルティの真実。最後に教えてください……。


謎の成年; ………。


レイン; あなたの正体。さあ、その真実を明かすのです!


ジジ; 真実とは残酷なものじゃ。

おまえの信じてきたもの全て、それを覆され失望に、心砕かれるかもしれぬ。

それでも真実を知りたいか。


レイン; おおっ!物言う鬼面、シンバの守護者ジジよ!

やはり、あなたの正体はシンバ……。

操魂によって生き長らえていたという噂は本当だったのですね!!


謎の青年;レインさん。

残念ながら私は、あなたの探しているシンバではありません。


レイン; 馬鹿な……。これ以上、私を欺くおつもりか。


ジジ; レインよ。シンバの生き死にがそんなに重要か?


レイン; いかにも。

世を和平へと導くは英雄シンバ。

かれの言葉が、かれの指し示すもの全てが、世界を変えていくのです!

そうです。

シンバが生きているというだけでこの世界の大きな財産となりましょう!


ジジ; レイン。人の命は永遠ではないぞ。いや、人だけではない。

魔族も、エルフも、鳥も木も草も。全ては限られた時間を与えられ生きている。


レイン; しかし!


ジジ; シンバは魂を繋ぎとめることなど、望んではいなかった。

それはソルティが一番よくわかっていたことじゃ。


レイン; それでは、あなたは……。あなたはいったい!誰なんだ……。


謎の青年; 受け継ぐ者。

シンバは己の志を未来に残すことを選んだ。

私はシンバの名を受け継ぎ今を生きている。その志と共に。


ジジ; なかなか見込みのある男じゃ。やがては牙獣を自在に使いこなす存在にもなろう。


レイン; ソルティ帝は……。

ソルティ皇帝はどうなったのです!影武者を残し、この地へ渡ったはずでは!


ジジ; ……たしかにこの地に渡ってきたな。

だが……、この者にシンバの志を託した後、逝きおった。


レイン; そんな……、かつての帝国の力をもってすれば……。

古の時代の学問!禁断の技術の力でなんとかなったものを!


ジジ; 幻想じゃよ。

どのように技術が発達しようとも、死んだ者は蘇らぬ。同じ人間は創れぬ。

そして死者は安らかな眠りを望んでおる。

次の魂へと浄化される、その時を待ちながら。

しかし、人はそれを認めぬ。その幻想に囚われながら生きておる。

死者の眠りさえも妨げ、自分の悲しみを埋めようと考える。

レイン……、おまえはどうなのじゃ。

愛する者の安らかな死を望まぬのか?


レイン; くっ。うっうぅぅ……。


ジジ; 命は何よりも尊い。しかし永遠ではない。

だから、人は託すのじゃ。後の世を生きる熱き魂を持つ若人に。

シンバも、ソルティも、その志は後の世代へと引き継がれておる。


レイン; うっうぅぅ……、うぅぅ……。


謎の青年; ………。

レインさん。行こう。ソルティさんのお墓に花を捧げに。



セヴァの外れにある小さな丘。

丘の上から見える海は、遥かネバーランド大陸へと続いている。

そして、大木の陰に隠れるようにその墓はあった。……ソルティ・レイブラント

墓石には、かすれた文字で確かにそう書かれている。

レインは静かに目を閉じて祈った。

英雄が若者達に託していった世界……。

この世界の行く末が、希望の光に照らされていることを。

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